30代の方にとって、まだまだ老後の生活は実感を持てないと思います。
人生の脂が乗ってくる30代では、仕事に打ち込んでいる方、運命の人と巡り合い結婚された方、すでにお子さんをお持ちの方など、多種多様なライフスタイルがあります。
しかし、どんなライフスタイルの方であっても「老後の生活をどうするのか」という問題からは避けて通れません。
そこで今回は、老後資金の貯め方として最もポピュラーな方法の一つでもある個人年金保険において、30代の方が知っておくべきことをご紹介します。
目次
個人年金保険とは
個人年金保険とは、公的年金や企業年金などでは不足する老後の資金を自分自身で積み立てる私的年金を指します。
2019年6月に金融庁が発表した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」によると、定年退職後にゆとりある生活を送るためには、厚生年金以外に約2,000万円の老後資金が必要とされています。
そのため老後の生活に備えるためには、公的年金以外にも適切な資産運用を行い、十分な資金を貯蓄しておく必要があります。
その方法の一つとして挙げられるのが、個人年金保険です。
個人年金保険では、加入者は60歳や65歳などの一定の年齢までお金を積み立て、その積立金を元にして、年金開始年齢からまとまったお金を受け取ることができます。
個人年金保険は、加入日が早ければ早いほど積立金に対して受け取れる年金の総額が多くなるため、30代などの若いうちから加入した方がお得なのです。
個人年金保険の2種類の受け取り方
個人年金保険は、契約時に2種類のタイプから保険金の受け取り方を選べます。
それぞれの性質をしっかりと理解し、自分にあった年金を選びましょう。
確定年金
確定年金とは、はじめから年金を受給する期間が決まっている受け取り方です。
受給期間が5年であれば5年間、受給期間が10年であれば10年間にわたり年金を受け取ることができ、仮に受給期間中に被保険者が亡くなったとしても、残りの年金は遺族が受け取れます。
確定年金は、事前にどのくらいの年金を受け取る必要があるのかをきちんと試算できる人に適している年金といえるでしょう。
終身年金
終身年金とは、年金を受給する期間が一生涯である受け取り方です。
確定保険とは異なり、受給期間中に被保険者がなくなった場合、年金の受給は終了します。
被保険者が長生きすればするほど年金を受け取ることができますが、早期に亡くなった場合は受け取った年金の総額が支払った保険料の総額を下回り、元本割れになる可能性が生じます。
終身年金は、長生きをする自信がある人に適しているといえるでしょう。
個人年金保険の2種類の運用方法
個人年金保険には、2種類の運用方法があります。
定額年金
定額年金は、支払った保険料の運用を保険会社が契約者の代わりに行います。
運用の成果に関係なく、契約者が将来受け取る年金額は契約時に確定しています。
安全に資金を運用したい人に適しているといえるでしょう。
変額年金
変額年金は、契約者自身が事前に定められた投資信託などの運用商品の中から運用先を選び、運用を行います。
従って将来の年金額は、株価や金利・為替などの変動により運用次第では払込保険料以上に多くの年金や一時金を受け取ることが期待できる一方で、定額年金のように受け取る年金額の最低保証がないため、元本割れする場合もあります。
資産運用に自信がある人に適しているといえるでしょう。
個人年金保険に加入するメリット
個人年金保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットを3点紹介したいと思います。
銀行預金よりも貯蓄性が高い
個人年金保険は、老後の出費に備えて若いうちからコツコツ貯蓄していく保険です。
貯蓄という面であれば、多くの人にとっては銀行に預ける方が馴染みが深いのではないでしょうか。
ただ銀行預金の場合、近年の日銀によるゼロ金利政策の影響によりほとんど利息が付かなくなっています。
従って個人年金保険でお金を貯める方が、銀行預金よりも多くのお金を受け取ることができます。
老後資金を確実に貯められる
銀行に預けたお金はATMからいつでも引き出すことが出来ますが、個人年金保険の場合、払込期間中に解約すると高確率で元本割れを起こすために途中解約がしにくく、契約した以上は払い込みが終了する20年、30年後までお金を引き出せません。
個人年金保険の資産の流動性の低さが、お金があればついつい浪費してしまう方にとってはメリットになるでしょう。
所得控除を受けられる
個人年金保険は生命保険料控除の対象であり、加入者は所得控除を受けることができます。
生命保険料控除とは、年間で支払った保険料の金額に応じ、所得税と住民税の対象となる所得額から一定額を控除できる仕組みで、加入者は税金の負担を軽減させることができます。
以下の表により、1年間で支払う保険料と控除額の比較を確認してみましょう。
所得税
年間払込保険料額 | 控除額 |
〜19,999円 | 保険料全額 |
20,001円〜40,000円 | (保険料×1/2)+10,000円 |
40,001円〜80,000円 | (保険料×1/4)+20,000円 |
80,001円〜 | 一律40,000円 |
住民税(新制度)
年間払込保険料額 | 控除額 |
〜12,000円 | 保険料全額 |
12,001円〜32,000円 | (保険料×1/2)+6,000円 |
32,001円〜56,000円以下 | (保険料×1/4)+14,000円 |
56,001円〜 | 一律28,000円 |
個人年金保険に加入するデメリット
個人年金保険にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
以下に主なデメリットを2点紹介します。
インフレリスクがある
定額型の個人年金保険は、将来受け取れる年金額を契約時に確定するため、物価が上昇すると相対的に価値が下がってしまいます。
たとえば、毎月15万円の保険料を40年間、総額720万円(=15万円×12ヶ月×40年間)支払い、40年後に合計750万円の年金を受け取るケースを想定してみましょう。
この場合、支払った保険料に対し、どの程度の保険金を受け取れるかを表す年金受取率は104%(=720万円÷750万円)となります。
年金受取率が100%を超えると、支払った保険料以上に年金を受け取れていることを意味し、得をしている状態です。
しかし、もし仮に40年後の物価が現在の110%に上昇していた場合はどうでしょうか。
将来受け取る年金750万円は、現在の価値に割り引くと681万円(=750万円÷1.1)となり、支払った総額の720万円よりも39万円も損をしていることになります。
一般的に物価は年月を経るに従い上昇していくので、このリスクは避けて通れません。
資産の流動性が低い
上述した通り、個人年金保険は払込期間中に解約すると高確率で元本割れを起こすため、途中解約がしにくい保険です。
しかし長い人生の中では、病気や怪我で医療費が必要になったり、子供が生まれた際の養育費や、働けなくなり収入が減少するなど、予期せぬ費用を突然用意しなければならないリスクが常にあります。
従って、個人年金保険を途中解約することの損を防ぐため、銀行預金などの流動性の高い資産を一定の割合で用意しておくことが不可欠です。
また、個人年金保険をあくまで老後の積み立て資金として考え、生命保険や医療保険、がん保険、就業不能保険や学資保険など、老後までの出費のリスクに備えておくことも大切です。
個人年金保険に加入するのがおすすめな人
個人年金保険への加入をおすすめしたい人の特徴を3つ紹介します。
計画的な貯蓄が苦手な人
個人年金保険は途中解約すると元本割れを起こすため、いわば半強制的にお金を貯蓄していく手段です。
従ってお金をすぐに引き出せる環境下では、ついつい散財してしまう意志が比較的弱い方におすすめできます。
老後資金に不安がある人
2019年6月に金融庁が発表した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」によると、夫婦2人が95歳まで生きるためには厚生年金以外に約2,000万円の老後資金が必要となります。
公的年金や企業年金だけでは老後資金を満たすことができない人にとっては、個人年金保険は適切でしょう。
安全な資産運用をしたい人
資産運用の手段としては投資信託や株取引、債権の購入などがありますが、いずれも運用者は一定の金融リテラシーを備えている必要があります。
一方、個人年金保険であれば保険会社に運用を任せることができるので、金融に関する知識や経験は必須ではなく、契約時に決めた年金額を確実に受け取ることができます。
しかも銀行預金よりも高い利回りを得ることができるため、安全な資産運用を行い着実に老後資金を貯蓄したい方におすすめできます。
30代個人年金保険の現状
ここからは、本題である30代から個人年金保険に加入する必要があるのかどうかについて論じていきます。
まずは日本の30代の方が現在どのぐらい加入しているのかを確認します。
上記のグラフは、生命保険文化センターによる「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」から抜粋した、30〜34歳および35〜39歳の過去12年に及ぶ個人年金保険加入率の変遷です。
グラフをみてみると、平成30年では30代の個人年金保険世帯加入率は、30~34歳が18.6%、35~39歳が20.0%となっており、30代の5人に1人が個人年金保険に加入しています。
12年前のデータと比較すると、30~34歳は17.4%から18.6%に、35~39歳は18.8%から20%へと増加しており、個人年金保険への理解が深まっているといえます。
30代で個人年金保険に加入した場合のシミュレーション
では具体的に30代で個人年金保険に加入した場合のシミュレーションを行ってみましょう。
明治安田生命「年金かけはし」のシミュレーションを利用し、30歳および35歳で個人年金保険に加入した場合の払い込む保険料の総額や年金を受け取れる時期、受け取る総額を確認していきます。
30歳から個人年金保険に加入した場合(男性・女性)
払込期間を30年、年金開始年齢を65歳、毎月支払う保険料を1万円に設定します。
男性・女性 | |
払込保険料累計額 | 360万円 |
年金年額 | 約38.1万円 |
年金受取累計額 | 約381万円 |
一括受取額 | 約375万円 |
年金受取率 | 105.8% |
払込期間を30年、年金開始年齢を65歳、毎月支払う保険料を1万円に設定します。
男性・女性 | |
払込保険料累計額 | 720万円 |
年金年額 | 約76.2万円 |
年金受取累計額 | 約762万円 |
一括受取額 | 約751万円 |
年金受取率 | 105.8% |
上記の表を見ると、30歳で個人年金保険に加入した場合、いくら保険料を払い込んだかに関わらず、年金の受取率は等しいことがわかります。
一方で、一括で年金を受け取る場合だと分割で受け取る場合よりも若干少額になります。
35歳から個人年金保険に加入した場合(男性・女性)
払込期間を25年、年金開始年齢を65歳、毎月支払う保険料を1.2万円に設定します
男性・女性 | |
払込保険料累計額 | 360万円 |
年金年額 | 約37.7万円 |
年金受取累計額 | 約377万円 |
一括受取額 | 約371万円 |
年金受取率 | 104.8% |
払込期間を30年、年金開始年齢を65歳、毎月支払う保険料を2万円に設定します
男性・女性 | |
払込保険料累計額 | 600万円 |
年金年額 | 約62.8万円 |
年金受取累計額 | 約628万円 |
一括受取額 | 約619万円 |
年金受取率 | 104.8% |
先ほどの表と同様、払込保険料累計額に関わらず年間受取率は等しく、一括で年金を受け取る場合では分割で受け取る場合よりも若干少額になります。
また35歳で個人年金保険に加入した場合、30歳から加入する場合よりも年金の受取率は1%低くなっています。
早い時期から加入した方が、払い込み保険料に比べて将来的に受け取る年金が多くなりお得であることがわかります。
30代から個人年金保険に加入するメリット
30代から個人年金保険に加入する2つのメリットをご紹介します。
年金受取率が高くなる
上述した個人年金保険のシミュレーションからもわかるように、個人年金保険は早く加入するほど年金受取率(年金受取累計額÷払込保険料累計額)が高くなります。
もう一度確かめてみましょう。
早期加入した場合 | 遅れて加入した場合 | |
加入時期 | 30歳 | 35歳 |
払込期間 | 30年 | 25年 |
月掛保険料 | 1万円 | 1.2万円 |
払込保険料累計額 | 360万円 | 360万円 |
年金受取累計額 | 381万円 | 377万円 |
年金受取率 | 105.9% | 104.8% |
35歳で加入するよりも30歳で加入した方が、支払った保険料の総額は同じであっても、受け取る年金の総額は4万円多くなることがわかります。
ライフプラン設計がしやすい
20代は仕事やプライベートにおいて移り変わりが激しく、将来の目処が立ちにくい時期であり保険についてまだ何も考えられないかもしれません。
それに対し、30代になるとキャリアプランも少しずつ見えてきて、将来設計がしやすいタイミングとなります。
特に結婚している方にとっては、自分自身だけでなく配偶者や子供への責任も生まれ、ライフプランを真剣に見直す必要が生じるのではないでしょうか。
30代は個人年金保険はもちろんのこと、他の生命保険の加入や見直しを行う絶好のタイミングなのです。
個人年金保険を選ぶ3つのポイント
では実際に個人年金保険の商品を選ぶ際には、何を気をつければ良いのでしょうか。
気をつけるべきポイントを3つご紹介します。
将来設計をしっかりと行う
個人年金保険に加入する前に、老後までにどのくらいのお金が必要か、どのくらい貯蓄できるのかをしっかりと考慮しましょう。
特に個人年金保険は途中解約すると元本割れするため、出来るだけ解約は控えてください。そのためには途中で支払い不能に陥らないように、加入する前にご自身の給料や出費をシミュレーションする必要があります。
もしご自身で試算することが難しければ、家計シミュレーションサイトなどのインターネット上のリソースを利用するとよいでしょう。
年金受取率が高い商品を選ぶ
個人年金保険に加入する目的が老後資金の貯蓄である以上は、出来るだけ多くの保険金を受け取れる商品を選ぶに越したことはありません。
従って払い込んだ保険料に対し、どのくらいの保険金を受け取れるかを表す年金受取率を重視し、出来るだけその数値が高い商品を候補に入れましょう。
個人年金保険料控除の条件を満たす
上述の通り、個人年金保険は生命保険料控除の1つである個人年金保険料控除の対象です。
しかし個人年金保険料控除は、残念ながらどんな契約内容でも受けられるわけではなく、控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 年金の受取人が保険料支払人(契約者)かその配偶者であること
- 年金の受取人が被保険者であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金の支払開始が60歳以上で、受取期間が10年以上あること
従って保険料の払込期間を10年以上、支払開始年齢は60歳以上、保険金の受取期間は10年以上に設定するなど、保険商品を選ぶときは契約内容が控除対象に該当するのかを確認する必要があります。
FP(ファイナンシャル・プランナー)に相談してみよう
個人年金保険の商品は、様々な保険会社が複雑な内容で販売しており、自分自身ではどの商品を選ぶべきか判断できないこともあるでしょう。
その際は加入者自身であれこれ悩むのではなく、保険の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのも有用です。
FPに相談すれば、相談者の不安や悩みに対するカウンセリングや今後の収支のシミュレーションを行ってもらえます。
相談者のニーズを的確に把握し、沢山ある保険商品の中から相談者にとって最適な商品を選ぶ専門家の力を余すことなく利用しましょう。
個人年金保険商品のおすすめベスト3
最後に、おすすめの個人年金保険商品を3つご紹介します。
日本生命「みらいのカタチ年金保険」
・年金受取率は男女ともに105%ほどと高い
・配当金がありインフレリスクに対応できる
保険商品概要
- 企業名:日本生命保険相互会社
- 保険商品名:「みらいのカタチ」
- 問い合わせ電話番号:0120-201-021
- 受付時間:月~金曜日9:00~18:00 土曜日9:00~17:00(祝日・12/31~1/3を除く)
住友生命「たのしみワンダフル」
・契約時に円建てで受取額が決まる
・保険料が一定額を超えると年金受取率が上がる
保険商品概要
- 企業名:住友生命保険相互会社
- 保険商品名:「たのしみワンダフル」
- 問い合わせ電話番号:0120-199366
- 受付時間:月~土曜日9:00~17:00(日・祝日・12/31~1/3を除く)
明治安田生命「年金かけはし」
・シンプルな内容でわかりやすい
・生存保障が充実しており、年金受取率が高い
保険商品概要
- 企業名:明治安田生命保険相互会社
- 保険商品名:フコク生命「みらいのつばさ」
- 問い合わせ電話番号:0120-662-332
- 受付時間:月~金曜日10:00~17:00 土曜日10:00~17:00(祝日・年末年始を除く)
まとめ
個人年金保険とは何か、という話から30代で加入するメリット、選ぶ際に意識するべきポイントについて紹介しました。
人生100年時代といわれる中、定年まで働いたとしてもまだ35年の月日が待っています。
老後の生活には誰しもが不安を抱えているかと思いますが、その不安を少しでも和らげ、退職後にゆとりある生活を満喫するためには、30代という若いうちから個人年金保険の加入を考慮されてはいかがでしょうか。