
目次
失業保険とは
失業保険とは、正式には公的保険制度である雇用保険のことで、失業者は一定の条件を満たせば国から給付金を受け取ることができます。
2020年7月1日現在、新型コロナウイルスによる影響のため、失業手当の給付期間が延長されています。
新型コロナウイルス感染症による給付期間の延長
厚生労働省が発表した「雇用保険受給資格者の皆様及びこれから手続きされる皆様へ~新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について~」によると、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」により雇用保険の基本手当の給付期間が延長されています。
対象者
離職日 | 対象者 |
令和2年4月7日以前 | 全ての離職者 |
令和2年4月8日~令和2年5月25日 | 企業の倒産や解雇などにより離職をした特定受給資格者と、転居や育児などにより離職した特定理由離職者 |
令和2年5月26日以降 | 新型コロナウイルス感染症の影響により離職をせざる負えなかった特定受給資格者と特定理由離職者 |
原則として、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」が施行された令和2年6月12日以降、基本手当を受給し終わる方が対象となります。
延長日数
基本手当の給付が延長される日数は60日です。
ただし35歳以上45歳未満で所定給付日数が270日の方と、45歳以上60歳未満で所定給付日数が330日の方は、30日のみの延長になります。
失業保険を受給する条件
失業保険を受給するためには、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」という、ハローワークが定義する失業の状態であることが前提となります。
従って、就職する意思がない人や、病気や怪我などですぐに就職するのが困難な人は、失業手当を受け取ることができません。
また、失業の状態であれば誰しもが失業手当を受給できるわけではなく、離職前の勤務先で雇用保険に一定期間加入していた人のみが対象になります。
雇用保険の該当期間は離職理由によって異なるため、注意が必要です
以下にて説明していきます。
一般離職者の場合
一般離職者とは、転職や独立などの理由で自ら退職する人のことです。
失業保険を受給するためには、離職日以前の2年間に雇用保険に12ヶ月以上加入していなければなりません。
特定理由離職者の場合
特定理由離職者とは、離職者が継続して働くことを希望しているのにも関わらず、企業が労働契約の更新をせず雇い止めを受ける人や、病気や妊娠など離職者の意思に反するある特定の理由がある人を指します。
特定理由離職者は主に以下の人が該当します。
- 有期契約や派遣契約の労働契約の更新を希望していたが、更新されず離職した人
- 妊娠や出産、育児により離職し、雇用保険法第20条第一項の受給期間延長措置を受けた人
- 両親の死亡や扶養、介護など家族事情の急変により離職した人
- 病気により離職した人
- 結婚による住所変更や勤務先の移転で通勤が不可能または困難になり離職した人
- 配偶者や扶養家族と離れて生活を続けられなくなり離職した人
- 企業の退職希望者募集時に離職した人
失業保険を受給するためには、離職日以前の1年間に雇用保険に6ヶ月以上加入していなければなりません。
特定受給資格者の場合
特定受給資格者とは、企業の倒産や解雇などにより止むを得ず離職した人のことです。
失業保険を受給するためには、特定理由離職者と同様、離職日以前の1年間に雇用保険に6ヶ月以上加入していなければなりません。
失業保険の給付日数
自己都合による離職の場合
一般離職者と特定理由離職者の中で、雇い止めを受けなかった離職者の失業保険の給付日数は以下となります。
離職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
15歳以上65歳未満 | 給付なし | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合による離職の場合
特定受給資格者と特定理由離職者の中で、雇い止めを受けた離職者の失業保険の給付日数は以下となります。
離職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | 給付なし |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業保険の受給額
基本手当日額の計算方法
基本手当日額とは、雇用保険で1日あたりに支給される給付金のことです。
基本手当日額は以下の計算式で求められます。
基本手当日額=賃金日額(離職直前、11日以上出勤した月6回分の支払われた賃金の合計÷180)×給付率(45~80%)
給付率は離職前の賃金日額が高い人ほど低く、賃金日額が低い人ほど高く設定されています。
基本手当日額の年齢別目安
基本手当日額の年齢別目安は以下の通りになります。
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
29歳以下 | 2,500円以上5,010円未満 | 80% | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 50~80% | 4,008円~6,165円 | |
12,330円超13,630円以下 | 50% | 6,165円~6,815円 | |
13,630円超 | 6,815円 | ||
30~44歳 | 2,500円以上5,010円未満 | 80% | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 50~80% | 4,008円~6,165円 | |
12,330円超15,140円以下 | 50% | 6,165円~7,570円 | |
15,140円超 | 7,570円 | ||
45~59歳 | 2,500円以上5,010円未満 | 80% | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上12,330円以下 | 50~80% | 4,008円~6,165円 | |
12,330円超16,660円以下 | 50% | 6,165円~8,330円 | |
16,660円超 | 8,330円 | ||
60~64歳 | 2,500円以上5,010円未満 | 80% | 2,000円~4,007円 |
5,010円以上11,090円以下 | 45~80% | 4,008円~4,990円 | |
11,090円超15,890円以下 | 45% | 4,990円~7,150円 | |
15,890円超 | 7,150円 |
基本手当日額の下限と上限
基本手当日額は年齢区分毎に上限額と下限額が決められています。
厚生労働省の令和2年3月1日からの基本手当日額等の適用についてによると賃金日額と基本手当日額の上限額は以下のように設定されています。
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
29歳以下 | 13,630円 | 6,815円 |
30~44歳 | 15,140円 | 7,570円 |
45~59歳 | 16,660円 | 8,330円 |
60~64歳 | 15,890円 | 7,150円 |
賃金日額と基本手当日額の下限額は以下のように設定されています。
年齢 | 賃金日額の下限額 | 基本手当日額の下限額 |
全年齢 | 2,500円 | 2,000円 |
基本手当日額の下限額は全年齢共通して2,000円になります。
失業中の保険料の支払い
失業中であっても、健康保険や年金などの社会保険料および住民税を払う必要があります。
健康保険の手続きについて
失業時の健康保険の手続きは以下の3つのいずれかの方法を選択することになります。
任意継続保険を利用する
任意継続保険とは、離職前に加入していた健康保険を引き続き利用することです。
任意継続保険を利用する条件として、離職前の健康保険に2ヶ月以上加入していることと、離職日から20日以内に任意継続を申請しなければなりません。
加入期間は最長2年間で、保険料は会社負担ではなくなるため全額自己負担になります。
国民健康保険に加入する
離職前に加入していた健康保険を脱退し、市町村が運営する国民健康保険に加入することができます。
離職日から14日以内しか市町村の窓口で手続きができません。
市町村によって保険料が異なるということと、加入者の所得や年齢、家族構成などによって保険料が決まります。
配偶者の扶養家族になる
配偶者が加入している健康保険の扶養家族になることが出来ます。
ただし扶養家族になるには、収入制限や同居か否かなどの基準があるため、配偶者が加入している健康保険の被扶養者の認定条件を確認する必要があり、失業手当は収入と見なされます。
また被扶養者になると保険料の負担はゼロになります。
国民健康保険の減免措置
倒産や解雇などの会社都合により離職した、雇用保険の特定受給資格者は国民健康保険を減免措置を受けられる場合があります。
離職した次の日から翌年度末までの前年度所得を30/100として保険料が算定されます。
国民健康保険の減免措置は各市区町村によって異なるため、確認が必要です。
住民税の減免措置
特定受給資格者は住民税の減免措置を受けられる場合があります。
失業の収入減に対し、住民税の減免措置をとっている自治体とそうでないところがあるため、各市区町村の税金の窓口で確認が必要です。
国民年金保険の減免措置
特定受給資格者は国民年金保険の減免措置を受けられる場合があります。
被保険者である本人と世帯主、配偶者の収入が少なく保険料の支払いが困難になる場合のみにとられる減免措置です。
前年所得に応じて免除の割合が全額・3/4・半額・1/4と異なります。
まとめ
失業者はハローワークが定める失業の状態を満たし、かつ一般離職者、特定理由離職者または特定受給離職者としての条件を満たせば、失業保険の給付金を受け取ることが出来ます。
失業保険の給付日数は自己都合か、会社都合による離職かのどちらかの場合で異なり、給付額は年齢によって変わってきます。
また失業中であっても、健康保険料や住民税は払っていく必要があります。
失業中の健康保険料の支払いには3つの対応があるため、離職前に自身に適した方法をしっかり確認しておきましょう。